強さ
もしも、どちらかに行けるなら??
…。
そういうのは信じない質なんだが
まぁ「もし」の前提に立って無理やり考えるとすりゃ…
…。
つーか、お前はどっちなんだ。
(未来、と答える部下。未来に行って、この戦争を終わらせる鍵を見つけて、
戻ってきたいです、と言う)
…、若人はポジティブだねぇ。
むしろ人類全滅しちゃってるかもしれないぞ?
そうなりゃ、戻ってきた時、なんの希望も持てずに一生を過ごすことになる。
(確かに、と笑う部下)
…。
俺はね、過去。
過去に行きたい。
…。
実際に行ける、行けないは別にしてな、
強ければよかったのに、と。今でも思う。
(どういう意味かと聞かれる)
あ…っつっても、勝ったり負けたり、優劣を競う強さじゃなくてな
…。
俺に必要だったのは、外からの力を受け入れて、冷静に考え、じっと耐える力。
それから、絶対に折れない意志の強さだ。
(黙って聞いている)
…「不公平」「不運」「嫉妬」「誤解」「無理解」…裏切り。
そこにプラスして敵襲、味方の戦死、緊張、重圧。
よほど人材不足だったんだな。当時の上官は俺の親父だったんだが、
あいつらの襲撃であっけなく死んじまった。
で…血のつながりから、無理やり隊長にさせられた最初の2年、
もう、数え切れないくらい、嫌な出来事がここには渦巻いてた。
そもそも真面目で優秀な軍人だった親父の代わりを、お気楽に日々を過ごしてた一般人の俺が努められるなんて、最初からあまりに無理があったんだよな。
今考えりゃ、あれでよく全滅しなかったもんだよ。
マジ最悪の隊長だろ
(なんとも言えない目で見ている)
…。
こんなご時世に笑われると思うけど、
俺さ
兵士じゃなくて、やっぱただの学生だったんだよ。
…って、まぁ今もそうだし、お前もそうか(笑)
(曖昧にうなずく部下)
だからな、自分に原因や責任の無いことで、責任を取る必要性を感じなかった。
オヤジが死んだのも俺のせいじゃないし、もっと大元を取ればこの戦争だって、
別に俺のせいで始まったわけじゃない。
だから、俺のポジションも、その内俺より適した、どっかの誰かがやるだろうって。
頭のどっかで考えてたわけだ。
そしたら案の定、真面目な親友が副隊長になった。で、そいつが色んなことを代わりにやってくれるようになって、…サポートというより、ほとんど実務だな。
俺はその指示に従って隊を動かすみたいな。
…今思うと、そいつも親父にそっくりなタイプだったな。
「ラッキー!」「助かった!」、アホな俺はそう思った。
(「お飾り」だったってことですか?)
言うねぇ。 でも割とそんな感じだったよ。
学生の頃から、自分の頭で考えたり、報われるのかわからない努力をするのが嫌だった。
無理に挑戦して、失敗して状況が悪化するのが怖かった。
だから、最初から、関わらない道を選ぼう。別にお飾りでいいんだ…って。
何も考えず、…
…。
馬鹿みたいだったな。
俺その時は、「お飾りの隊長だから。自分に責任がないから」って思ってたけど。
都合の悪いことを見ないで、放り投げてきた姿勢が、
次のトラブルをどんどん引き寄せてたんだってことに、最後の最期まで、
そばで頑張ってたあいつが、つぶれてしまうまで気付かなかった。
弱音とか愚痴も、聞いたことなかったから、俺と違って、「当然のようにできる人間」なんだって思ってたんだと思う。
ほとんど寝てなかったせいで判断力が落ちてたんだろうな。
いつもなら絶対にしないミスで、操作する機械に挟まれて、そのまま。
(沈黙)
(自殺だったんですか? と聞く)
さぁ…。でも違うだろうな。
ある意味、俺が殺したみたいなものだけど。
強さがほしかった。もし戻れるなら、今はただ切実に思う。
…あいつみたいに、物事に静かに耐えて、取り組む力と頭が、そうじゃなくても気付くことがあの時の自分にできれば…
もしかしたら、あんな事故起こらず、今のこの状況も変わってたんじゃないかって。
(自嘲気味に笑って)死人出てる以上、「もしかしたら」を、後から言うことほど無意味なものはないか。
(沈黙)
とまぁ…こんだけ長々「もしも」について語ったわけなんだが、
俺さぁ。さっきも言ったけど、人間が過去や未来に行けるなんて話、一ミリも信じてないわけよ。だから、まぁ
…。
何かを選んだり捨てなきゃいけない時って、あるよな。こんな戦況になってからは、あんたにも経験がある筈だ。
(うなずく)
そういう時な、「物事を瞬間的に天秤にかけて選ぶ力」が、多分今やっと備わってきたんだと思ってる。
言い換えると、「どちらを残せばメリットになるか」。
つまり、あとになって「もしもあの時」なんて絶対に考えない、その時考えるベストな判断を、その時は非情に思えても、自分の経験から割り出す。
若人流に言うなら「後悔しない生き方」ってやつだ。
(「もしも」前提で、話題を振ったことを後悔する部下)
(笑いながら)んな顔するなよ。怒ってるわけじゃない。
…入隊テストは今日で終わりだったな。
あんたのことを、この3日見てきて、…まぁ正直不安なとこも多いが、総合的に判断すれば俺はあんたの入隊を許可したい、と思う。合格だ。おめでとう
(駄目だと思っていたので、非情に驚いて声が出ない部下)
ただ…俺は自由意思を尊重したい。こんな厳しい戦況でも、だ。
例え戦力が少しでも増える方がメリットなのはわかってる。
だが、自分の昔のことを思い出すと「無理やり」は歪さを生むことを知っている。
…。
だから、今日の話を踏まえた上で、もう一度聞きたい。本当に入る気があるか。
ここは地獄だ。おそらく数年たって天国に変わるような、甘い展望は…今のところ
絶対に期待できないと思ってくれ。
今なら、どうとでもやり方を変えることができる。引き返すか、全力でこの道に賭けて、この国を助ける人間のひとりになるか。
…ここに入るなら、もう一度よく考えた上で、返事を聞かせてくれ。
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設定をそこまで考えず、つらつら考えてしまったシリーズ第三弾(^o^)
少し近い未来、学兵だけで構成された軍隊、その上官のとこに「入隊したい」と志願してきた少年の会話。
をイメージしたものです。敵はなんなのか、化け物なのか、ゾンビなのか北●鮮なのか…(こらこら)
本来は徴兵されない年齢だけど、志願してきた=多分相当若い子です。
てか、入隊してないのに部下とか書いちゃってるし。
性別変更、アドリブおk。
よければ挑戦してみてください。